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2020.12.29

月刊コマ送り20「肉まん」

 

もし肉まんになるならコンビニの肉まんがいい。

 

もちろん中華料理屋で食べる蒸したてほわっほわな肉まんもおいしいし、小腹が空いたときに実家の冷凍庫をあけると入っていたレンジで温める肉まんも大好きだ。

 

そもそも肉まんという存在がいい。

 

ひとりで大きな口をあけてかぶりつくのも(圧倒的にこのパターンが多いけれど)、誰かとはんぶんこして食べるのもいい。家で食べてもお店で食べても外で食べても、それぞれの空間でそれぞれにおいしい。寒空の下で友だちと記憶にも残らないどうでもいいようなことをだらだら話しながら手と口をあたためていたときも、悔しい気持ちを抱えて家に帰って涙に鼻水までそえて頬ばったときも、家族で囲む食卓でも、いつでも変わらずしあわせな味をしている。小学生の頃に兄が持っていた漫画で肉まんの成り立ちを読み衝撃を受けてもなお、やっぱり肉まんはおいしかった。

 

先日ひさしぶりに実家に帰った日、とんぼ返りで市内のひとり暮らしの部屋に戻る前に、新しくできた書店に寄り道をした。西鉄の駅を出て川沿いを歩き、こじんまりとした書店を訪ねて、圧倒された気持ちでぼんやりと帰路につく。書店に入ったときはまだ少し明るさが残っていた空は、もうすっかり夜にむけて衣装替えをしていた。

 

バスに乗ればすぐに帰れたけれど、すこし歩きたい気持ちもあったし、あとはいつものお店でハイボールかホットウイスキーを飲んで帰ろうかなとも思っていた。信号待ちをしていた交差点の向かい側には、こめかみが痛くなるくらいに眩しいコンビニがあった。信号が青に変り、集団行動のように一斉に足を進めたうちの数人は、そのまままっすぐにコンビニに吸い込まれていった。

 

冬だ。迷いなくレジに進み、肉まんをひとつ注文する。レジ袋を断って外に出た。すこし広めの駐車場のすみっこで肉まんで暖をとり、交差点の信号が幾度も変わるのをしばらくの間ずっと眺めていた。

 

コンビニの肉まんは街の風景を見ることができる気がする。

 

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