2020.03.19
まだ見ぬアイデアと腕を試す、 モノづくりの醍醐味を味わう。大川TATEGUMIアーカイブ〜01骨組み編
大川TATEGUMI というプロジェクトに関わらせてもらった。
2016年から準備に取り組み、2020年3月までのおよそ三年間に渡る長期の取り組みだ。
プロデュースを手掛ける株式会社SAITOさんにお声掛けいただき、我らがアポロチームは広報として参加させていただく。その時点で、既に大まかな骨組みは決まっていた。なので、プロジェクトを説明するなかで、苦労して立ち上げた印象を与えてしまうかもしれないが、“関わらせてもらった”という控えめな表現が正解であることを、まずはエクスキューズしておきたい。
しかし、このプロジェクト、正直一言では説明が難しい。なので、その骨組みからきちんと説明していきたい。
①まずは、大川の建具組合の職人さんから有志を募る。
いきなり横道にそれてしまうが、家具でお馴染みの大川は、最近では、木工万能産地ともよばれ、さまざまな木工技術の集積地として知られている。
もちろん、建具産業もしかり。大川組子と呼ばれる伝統産業も残るくらい裾野も広ければ、優秀な職人も揃っている。というわけで、建具組合もかなりの大所帯。今回の大川TATEGUMIプロジェクトに集まってきたのは、一部有志。新しいモノづくりのプロジェクトに疑心暗鬼ながらもチャレンジ精神をもっている職人さんたちだ。
②職人さんたち、チームに分かれる。
プロジェクトを進めるにあたって職人を全4チームに分けて進めることになる。概ね1チーム4〜5名の職人が振り分けだ。
ここで驚きが一つ。大川の建具職人たちは、とにかく仲良し。夜の飲ミニケーションもかなり深いし、仕事の協力関係もできているし、大げさでなく大きな家族みたいだ。しかし、一つのモノづくりをみんなで知恵をだして行う!といったコラボ的なことは、これまでそれほど機会がなかったのだとか。なので、今回のプロジェクトのはじまりに、それぞれの工房をまわって「職人のお仕事を拝見」の機会が設けられていたのだが、その仕事っぷりに「一緒にまわったチームの職人が驚く」といったシーンも何度か見受けられた。
チーム分けにあたっては、「あみだくじ」という実にアナログなスタイルが採用された。しかし、これが思った以上の功を奏して、良いも悪いも、いろんな意味で最もバランスのとれた4つのチームが完成。職人同士のコミュニケーションは果たしてどうなるのか?乞うご期待いただきたい。(どんな職人が関わったのか、こちらもウェブサイトにて紹介中!決めポーズで撮影した写真と共にご覧いただきたい)
③福岡でアツい注目を集める4人の建築家集まる!
ここで颯爽と登場したのが、モノづくりの指針を描く建築家たちだ。全4チームを率いるために、プロデューサーによって人選された4人。プロフィールや実績はこちらに記されているので省略させてもらうが、ここでは超個人的な所見での建築家紹介させてもらおうと思う。(ご本人が拝見されないことを願いながら)
百枝優(Yu Momoeda)さんは、“時代を圧倒的に羨ましがらせる建築をつくる人”ではないだろうか?(と、妄想している。)百枝さんの作ったものをいくつか拝見させていただいたが、ハコにデザインが加えられたことによる圧倒的な存在感を、フォルムにディテールにひしひしと感じさせられる。それは、決して奇抜なアイデアとか、ユニークさとかではない。思い悩みながら建築と向き合う真摯な姿勢だからこそ生み出されれた線であろうと、イメージされるところがまた素敵なのだ。
大学教授でもある平瀬有人(Yujin Hirase)さんは、“歴史に残るカタチをつくる建築家”ではなかろうか……と、妄想している。膨大な歴史の詰まった知の引き出しをサッとスムーズに広げながら、描くデザインは、数十年先を見つめている感じ。最近、公共のプロポーザルで引く手あまたなのも、そんな視点が時代に必要とされてこそなのではー。と、上から目線で断言したくなってしまう。
3人目のメンバーは、女性建築家として活躍する大庭早子(Hayako Oba)さん。職人も男性ばかりなので、「チームのバランス」を考えて建築家には女性メンバーを……。と、思いたくなるが、語弊なく語ってしまえば、女性という枠に留まらないのが大庭さんだ。単身ブラジルで建築武者修行にも出かけたことのあるという人物だけに、誰よりも大胆な発想が彼女の持ち味だと確信している。もちろん、大庭さんの女性ならではの細やかな気配りと優しさが、プロジェクト全体を進めるにあたっても大きな推進力となっていた。
そして、4人の建築家のなかでも最も“素材感”という言葉しっくりくるのが高木正三郎(Shozaburo Takagi)さんだ。音楽業界では、専門家から高い評価を得ている人をミュージシャンズ・ミュージシャンと言うが、高木さんはずばりアーキテクト・アーキテクト(そんな言葉があればだが!)その素材に対する深い造詣は、施主はもちろん、同業者の建築家からも一部熱狂的な信頼を得ている。しかし、人としてジャンルで分けると無骨なタイプ。初見は、その仏頂面に騙されるそうになるが、一度スイッチが入るとものすごくチャーミングに建築を語る。そんな高木さんのことは、この後続く「アーカイブ02モノづくり編」でも語り尽くしたい。
④大川TATEGUMIというプロジェクトネームをつくる。
ここまでで唯一アポロチームで仕事らしい仕事ができたのが、プロジェクトにネーミングをつけることだ。ここまでの骨組みがあったおかげで、おりてきたのは「大川TATEGUMI」という名前。メンバーからの承認もスムーズにおり、旗印となるプロジェクト名を、無事、送り出せることができた。
ロゴづくりにも力を入れた。目指したのは、プロジェクトの旗印となって、みんなのやる気をその気に昇華できるもの。さらに、ターゲットは建築に関わる人たち。そこに届くデザインとは……。
いよいよ骨組みが出来て、棟上げならぬ物語のスタートとなるのだが……。続くモノづくりの話とプロジェクトの全貌は、「アーカイブ02モノづくり編」をお楽しみいただきたい。