福岡発!最寄りの気になる「ヒト」とか「場」とか。
雑多にまとめる語り場

2019.08.22

【SPECIAL INTERVIEW】あやふやな本の記憶を紐解く場「あやふや文庫」

 

いつものようにTwitterのタイムラインを
スイスイと流し見していた

気になる人を片っ端からフォローしてしまうので、
タイムラインの流れが異常に速い

だから自然と目についたものだけ、
ピンときたものだけを読むようになった

たぶん動体視力があがっているのではと思う

そして5月のある日
気になるツイートを見かけた

 

 

まだはじまったばかりのアカウント
あやふやな記憶を元に、Twitterにいるみんなで、
それが何という本なのか探そうというもの

 

 

 

そういうこと、ある

 

大学生の頃、夜中に急に頭に浮かんできたシーンがあった

もちろん全体のストーリーを覚えているわけでも、
ましてや作品名も作者も何も思い出せない

でも、こんな雰囲気だった、こんな描写があった

そう思ってTwitterに書き込んだとき
「それって●●●じゃない?」とリプライをもらった

教えてもらった作品を探して読んでみる

そうだ!これだ!こういう話だった!

なんで急に思い出したのかはわからないけど
とてもうれしくなったのを覚えているし、
それは今でも私の一番のお気に入りだ

 

Twitterではそういうことができる

そういう曖昧な記憶をみんなで考えて意見を出して
その発見を共有することができる

 

そんなわくわくさせてくれる「あやふや文庫」の店主に
お話しを聞いてみることにした

 

 


 

「あやふや文庫」では、TwitterのDMを通じて「あやふやな本の記憶」を集められていると思いますが、具体的な活動内容を教えていただけますか?

 

みなさまからのあやふやな本の記憶をお聞きし、TLで公開しています。

そして、ツイートを見たユーザーから特徴に当てはまるものを教えていただき、依頼者様の記憶にヒットするものを「答え」として発表しています。

レファレンスを依頼する人と、それをクイズとして解く人の仲介といった感じです。

 

 

「あやふや文庫」は2019年5月21日、今からちょうど3ヶ月前にアカウントを開設されましたよね。なにかはじめるきっかけになったできごとがあったのでしょうか?

 

その日は雨が降っていて、持っていた革製品に水が染みていくのを見たときに「敢えて革靴に水を染み込ませる描写がある小説があったような気がする」ということが頭をよぎりました。

でも、自分の友人に聞いてもわからないだろうし、検索にひっかかるような場面でもありません。

こういうときにインターネットを介して不特定多数の人に尋ねることができたら助かるな、と思ったのがきっかけでした。

 

 

たしかに、不特定多数の人にたずねることができるのはTwitterの利点ですよね

 

実は、Yahoo!知恵袋や、2ちゃんねるでも似たような取り組みはあるんです。
ただそれに答える側の人は、いつもそこを巡回している人などに限られているように思っていました。

普段たまにしか本を読まない人などにも拡散されることを通じて見てもらえたり、毎日いろんな人がいろんな目的で見ていることが多いtwitterで発信する方が効果的ですぐに本が見つかるのではないかと。

 

 

アカウント開設時から頻繁にチェックさせていただいていますが、誰かのあやふやな記憶からどんな本かを考えるのも楽しいし、同じものを読んだことがあっても「このひとはこういうところが記憶に残ったんだ」という新たな発見があってとてもおもしろいなと思っています

 

そうなんですよね。

結構設定が違うものや、「こういうところは同じだけどこういうものは違うな」というものも、臆することなく記載して欲しいです。というのも、案外そういう作品が正解なことも多いんです。

 

 

人によって印象的な場面は違いますもんね。
そしてまた「あやふや」というネーミングがぴったりだなーと

 

実はアカウントを作ろうと思った時点で悩んだこと、立ち止まったことは全くなくて、イメージカラーとそれに沿ったフォント、それを通じて表したいアカウントとしての雰囲気を一気に決めていったので、名前もパッと思いついたものをそのまま使いました。

同義の「あいまい」も少し考えたのですが、「あやふや」の方が語尾が抜けていく音なのでアカウントのイメージに合うと思って。

 

 

言葉の響きも大切にされているんですね。ツイートの文章も穏やかなイメージがあります

 

本当は、私自身はもっとせっかちで適当な人間なんです。でもアカウントの雰囲気のために、なるべくのんびり丁寧にするようにしています。

 

 

アカウントの雰囲気はどういったものを意識されているんですか?

 

古本屋さん特有のあたたかさの要素と、インターネット時代特有の人のあたたかさを融合させたような「場」に、本とインターネットに強い「店主」がいるという漠然としたイメージがあります。「そこに人がいるリアリティ」みたいなものを、フォントや色など、視覚的にも構築していければと考えています。

それから、ずっと本を探しているだけだとbotのようになってしまうので、好きな本やトレンドにあがるような作品についても、時々ふれるようにしています。

そこにある人間味やあたたかみの雰囲気を崩さないようにこころがけていますね。

 

 

現在は新規依頼の受付を停止されていますよね。
それでもNo1434まで公開されていますが、今の時点でどのくらい依頼がきているんですか?

 

6,000件くらいです。

でも、リクエストとは違うものも混ざっているので、厳密にはもうすこし少ないかと思います。

 

 

6,000件ですか!
依頼はTwitterのDMのみで集められているんですよね?

 

はい。マシュマロや質問箱のようにアカウントとの結びつきがないものはその後のやりとりがスムーズにいかない可能性を考えて除外しました。

メールなどもいろんな人との連絡がまぜこぜになってしまうので「あやふや文庫」としてはDMのみで受け付ける方法が最適だと考えています。

 

 

これまでのなかで特に記憶に残ったリクエストはありますか?

 

たくさん興味深い依頼がありましたが、候補作全作品を正解とした「亡くなった家族が生前おもしろいと言っていた本を探したい」というものが印象に残りました。

他にも学生時代の大切な人との思い出の本だったり、闘病中の心の支えになった本だったり。もちろんなんとなく気になっただけというものもありますが、素敵なエピソードを含んだ依頼をたくさんいただいています。

 

 

その当時の記憶との結びつきは、当人でなくてもハッとさせられるものがありますよね。
そんな店主の「記憶に残る言葉」があればお聞きしてみたいです。

 

忘れられない言葉としては、香月日輪さんの「僕とおじいちゃんと魔法の塔」に出てくる

どれくらいの冗談を理解するかで、そのものの心にどれくらいの余裕があるかがわかる。また、冗談に知性が必要だ。どんな冗談を理解するかで、そのものの知性がわかる

という文章があります。

後半はゲーテの引用だとその後に述べられていましたが、この言葉が描かれている場面はずっと記憶に残っています。

 

 

たしかに、知っているからこそ楽しめる、ということはたくさんありますよね。

 

勉強をする意味というのは人生を楽しく生きるためにあって、ナイトミュージアムに出てくる偉人は知っていたほうがおもしろいし、香炉峰の雪と言われたら御簾を高くあげられたほうがおもしろい。笑えることの対象は多いほうが人生はずっと楽しいし、そのための余裕はなるべく持ち続ける必要がある。

このシーンに出会ってから、そんな風に思うようになりました。

 

 

店主の考えを垣間見ることができてとてもうれしいです。
もし今後の目標などがあれば教えていただけますか?

 

今はとりあえず、いただいている依頼を投稿していくことで手一杯なのですが、将来的に例えば動画配信サービスや音楽配信サービスと連携して映像版・音楽版を展開していけたらおもしろいなと思います。……目標は高く、という感じですね!

 

 

 


※この記事の記憶があやふやになる前に

▪要CHECK! あやふや文庫 Twitterアカウント

▪これまでの「あやふや本」のまとめは 【あやふや書庫】でご覧いただけます

 

Author: