2026.02.12
観劇せん?・・・FUKUOKA Physical Theater(ふっかる)第2回公演『マイムモモ』インタビュー!

2025年に福岡で結成された「FUKUOKA Physical Theater(ふっかる)」の第2回公演『マイムモモ』が、2月26 ・27日に大橋の塩原音楽・演劇練習場で上演されます。
原作はミヒャエル・エンデの名作『モモ』。前作『マイムハムレット』に続き、脚色は別府源一郎さん、演出はいぬづかひかるさん、音楽は井上公太さん。出演は井上公太さん、いぬづかひかるさん、草野明華さんに、今回、峰尾かおりさんが加わります。
「フットワークを軽く、いつでもどこでも上演可能なスタイルを目指して設立された小規模な演劇プロジェクト。観客の想像力を大きく刺激することを重視し、軽妙なセリフとマイムをフル活用して観客の心に深く響く作品を目指します」というふっかるのこと、めちゃめちゃ気になっておりました!
そこで、今回『マイムモモ』の稽古場におじゃまし、みなさんにお話をうかがってきました(井上さんは欠席)。

▲左から峰尾かおりさん、草野明華さん、いぬづかひかるさん
◆前回は、知らない間に脚本ができあがっていた
――FUKUOKA Physical Theater(ふっかる)は2025年に始動し、同年8月に『マイムハムレット』を上演、今回の『マイムモモ』が第2回公演となります。どうやって始まった団体なのですか?
いぬづか 私は関東でパントマイム(言葉を使わず、身振りと表情だけで物語を表現する劇)やコーポリアルマイム(近代マイムの父と呼ばれるエティエンヌ・ドゥクルーが構築した役者芸術)をやっていたのですが、福岡に引っ越してやらなくなって、「でもやっぱりお芝居やりたいな、作品づくりしたいな」というのがありました。ただ知り合いが1人もいない状態だったし、なにもできないのが2年ぐらい続いている時に、ひょんなことから草野さんと知り合えて、草野さんが「身体表現に興味あります」と言ってくれたので、「じゃあ一緒にやろうよ」って基礎練とかやっていたんですね。で、それを動画に撮ってたんだよね。
草野 はい。
いぬづか そしたらある日、草野さんに「別府さんに見せました。おもしろいって言ってました」と言われて。そしたら後日、別府さんから「『マイムハムレット』の脚本書きました」と急に脚本が送られてきて、「え、なに? なになに?」みたいな。
――ええ?(笑)
いぬづか それで「じゃあちょっと打ち合わせしましょっか」みたいなところから、「マイムをやる、台詞もある、音楽はギター一本で」というミニマムな企画をやろうと決まりました。
――草野さんはなにか目論見があって別府さんに動画を見せたのですか?
草野 いえ、雑談の中で「そういえば私いまマイム習ってて、動画見ますか」と見せたんですけど、気付いたら別府さんが脚本を書いていた。
別府 (笑)。いや、草野さんも「なにかしたい」みたいなことを言っていたので、「だったらこのマイムでやるのは?」みたいな話をしたんですよ。それで「古典とかで遊んだらおもしろくない?『ハムレット』とか」って言ったら「そうですね」って言ったから、じゃあ書こうかなと(笑)。
いぬづか 「書いていい?」みたいなことは草野さんに聞いたんですか?
別府 いや、だって書くのは勝手だから(笑)。
――動画を見て、「これができる」と思って書かれたんですか?
別府 草野さんに聞いたのが、「マイムをやっている。なんかしたい。でもマイムだけの公演をしたいわけじゃなさそう」っていうことだったので、マイムバリバリのお芝居があったらおもしろいよねって話して、草野さんが「そうですね」って言ったので書きました。
一同 (笑)
――いぬづかさんと別府さんはお知り合いだったんですか?
いぬづか 顔は知っていたんですけど、そんなに話はしてなかったです。
――すごい。じゃあ3人それぞれの「なんかやりたい」から始まったんですね。初演はそこに音楽の井上公太さんが入ってくるわけですよね。
いぬづか 井上さんはこちらから誘いました。
別府 作品について話した時に、「これをやるとすれば、音はなんか欲しいよね」となって。でも既成の曲を流すのはなんか違うかもというところから、ギター一本で弾ける人をあたったんですよ。そしたら井上さんが「クラシックギターがあれば練習します」と言ってくれたから、「あげるからやってくれ」って言って。
――ん? 「あれば」ってことは弾いてなかったということですか?
別府 そうなんですよ。でも彼は大学で音響を学んでいて、楽器全般行けるって感じだったので。
――すごくないですか? 普通弾けなくないですか?
いぬづか 本番では弾きまくってくれていました。すごかった。

▲井上公太さん
――それで4人で始まったんですね。公演自体はどうでしたか?
いぬづか やってみるまでこの公演がどう受け止められるのか全然わからなかったので、すごく不安でした。照明も生明かりだけで小道具もないし。
――実際、お客さんはどうでしたか?
いぬづか 想像を絶するぐらい温かくて、終わった後も「これ夢だったかな」って思うぐらいでした。あんなに食い入るように観てくれて、終わった後も「おもしろかったです」とか言ってくれて、「なんで?」って今も思っています。
峰尾 私は客席で観たのですが、実際におもしろかったです。物語のダイジェスト版が繰り広げられるみたいな感じで、だからかえって登場人物の心情が浮きあがるみたいなところがあって。場面が変わったり役が変わったりするのを、身体を使って見せてくれるのも、おもしろくて。

▲峰尾かおりさん
――演じる側としてはどうでしたか?
草野 私は芝居の中で「身体が使えない」というのがずっとコンプレックスだったので、やってる時も「できてるのかな」という心配がありました。でも周りの反応も今まで出たお芝居で一番良かったんじゃないかなっていうくらい良くて。「次も楽しみ」と言ってくれる人も多かったし、私自身もお芝居の中で身体を使ってアクションすることへの苦手意識が徐々に薄れていった感もあったので、よかったなって。
――徐々に薄れたのは本番でですか?
草野 稽古の中でです。その時は手取り足取りみたいな感じでつけてもらっていたので。それを経て今回は自分でも成長を感じています。
いぬづか ほんとうに成長してます。

▲草野明華さん
――いぬづかさんは演出も手掛けられていますが、もともとマイムをやってこられていた中で台詞のある芝居はつくっていたのですか?
いぬづか いえ、台詞ありの劇の演出は初めてでした。その前は自分で立ち上げた路上劇団の演出とかはやってたんですけど、それもマイムなので言葉はない。だから言葉ありの演出は今回が初めてでした。
――へえ!
いぬづか でも関東にいた時、どんなものをやりたいのかがちゃんと定まってなかったんです。「これじゃない、これじゃない、じゃあ自分は何がやりたいんだ」ってわかりきらないまま一回、燃え尽きてしまって。それでもうマイムから離れようと思って、一度社会人になりました。「でもやっぱなんか表現したいんだよな」っていうのがむくむく生まれてきたので一人で稽古を再開したら、さっき話した流れで『マイムハムレット』をやることになって、そこで私は動作を作りたいんだっていうのがわかったんです。
――動作を作りたい?
いぬづか 例えばマイムの「壁が見える」みたいな、ああいう「技術」を見せたいわけじゃなくて、「その人が今どんな心情だから、その動作にこういう動きが見える」みたいなことがしたい。例えば「焦ってるから手元が狂う」という動作を繋げていって心情を見せたいと思いました。
――なるほど、なるほど!
いぬづか 基礎となってるのはコーポリアルマイムなんですけど、それが土台にあるうえで、生きてる人の動作っていうのをちゃんと見たいというのが自分にはあったんだな、と思いました。
――みなさんの動きは、いぬづかさんが全てつけるのですか?
いぬづか いえ、叩き台は私が持ってきて、みんなで叩くみたいな感じかな。めっちゃ叩かれますけど。
一同 (笑)

▲いぬづかひかるさん
◆「すぐ真に受けるから、うちは」
――今回ミヒャエル・エンデの『モモ』をやるのはどうしてですか?
別府 『マイムハムレット』の頃、いぬづかさんが「次もやるとしたら『モモ』をしたいな」ってつぶやいていたんですよ。それで「やった!」と思って、『マイムハムレット』の本番前に脚本を書き上げました。それで「読んで」って渡したんですけど。
いぬづか 「いや本番前」っていうね(笑)。だから本番が終わって読んで、修正を何度か繰り返しましたよね。
別府 6回ぐらいかな。
いぬづか 『マイムハムレット』の時は別府さんが第1稿(ほとんどの場合、第1稿は修正が入る)のつもりだったものをそのまま本番で使っているんです。でも今回は前作の反省も反映して第6稿までいきましたね。
別府 でもいぬづかさん、そんなに『モモ』に思い入れがあるわけじゃないと思う。
いぬづか (笑)。いや、前年に『モモ』読んで泣いたのでタイトルを出したんですけど、気付いたらもう先をいっちゃってるから……。
一同 (笑)
――峰尾さんは初参加されて、お稽古はどうですか?
峰尾 すっごいおもしろいんですけど、やっぱ身体がついていかない(笑)。
いぬづか ハードですからね。
峰尾 でも本気のごっこ遊びをこうやってる感じはすごい楽しいです。元々私はバカダミアンとか、そういう全力のごっこ遊びみたいな要素があるものが好きなんですよね。だからいろんな場面をやるのが楽しい。

――今回、峰尾さんにオファーしたのはどうしてだったのですか?
別府 最初は初演と同じ2人を想定して脚本を書いたんですよ。でもモモと親友2人のシーンが重要なので、ちゃんと3人でやりたいねっていうのがあったよね。
峰尾 私が草野さんからその話を聞いて、「私その時期あいてるよ? やろうか?」って軽く言ったら、あれよあれよと決まっていって。「じゃ、会おうか」「じゃ、一緒ご飯食べようか」で、ご飯食べたらもう出る感じだった(笑)。
いぬづか すぐ真に受けるから、うちは。
別府 冗談が通じないんだよね(笑)。
峰尾 いやいや冗談のつもりはなかったんだけど、条件的に本当に私でいいのかなっていうはありました。
いぬづか でも私は私で舞台で峰尾さんを観た時に、峰尾さんの身体表現いいなと思っていたんですよ。だから「3人」ってなった時に「峰尾さんがいる」と思いました。
――実際、峰尾さんは舞踏もされているそうですね。
峰尾 そうですね。私は以前、病気をして演劇をやめていたことがあるんですけど、そのうち「してないほうが病気になる」と思っちゃって(笑)、その時に舞踏から再開したんですよ。その舞踏は、身体能力ではなくどんな肉体の人でも踊ることはできるんだという考え方でやっているところだったので、そこから始めたんですけど、そのうちにだんだん体力もついて、それでまた演劇を始めたっていう経緯があります。だから、いぬづかさんが「でもやっぱりやりたい」っていう気持ちがちょっとわかるなと思って聞いていました。

◆「文字に書いてあること」じゃなく「場面」を立ち上げる稽古
――『マイムモモ』のお稽古はどうですか?
草野 私は『マイムハムレット』の時よりいじけてないです。
一同 (笑)
草野 前は追われながらやった感じがあったんですけど、今回は役の掘り下げもそうだし、場面のことをちょっとずつ考えられるようになってきたと思います。それに、思ってることをすごく共有してくれる稽古場なので、「ここはこうしたいんだな」がわかるし、そうすると自分で考えやすくなって、お芝居に対しての考え方とか向き合い方もちょっとずつ変わってきたかなと思います。ただ『マイムハムレット』の時よりも、やることがめちゃめちゃあるんだなと感じて、焦ってきてはいます。
いぬづか 私も最近それを思いました。やればやるほどやることがめちゃくちゃあるよね。本番直前まで創作が続くような作品になるだろうなと今の時点で思っています。
別府 『マイムハムレット』の時は手探りで、稽古スケジュールも進んでいるのか遅れているのかすらわからない感じがありましたしね。でも今回でやり方が確立しつつあって、そのぶん「これは本番では使えないだろうけどやってみよう」みたいなこともやることができている。ちょうどいい感じでやれていると思います。

――峰尾さんは他の作品の稽古場との違いは感じますか?
峰尾 どうだろう。それぞれ違うからなあ。でも私は、空間再生事業 劇団GIGAの山田恵理香さんもそうなんですけど、役者が状況を作るということを重視されている稽古……「文字に書いてあること」じゃなく「場面」を立ち上げるということをする稽古に馴染みがあるので、この稽古場は馴染み深いというか、好きな稽古場です。この脚本を使ってどんな状況を人間の体で立ち上げるかっていうことを工夫するのが好きだし楽しいですね。
――草野さんはマイムの稽古を重ねてどんな違いを感じていますか?
草野 昨日ちょうどキックのシーンを練習していたんですけど、いぬづかさんに「(存在していないけれども)ちゃんと対象を見て」と言われて、その教え方がすごくわかりやすかったんですよ。「この人の身体のこの辺りを蹴って、倒れた人の身体をちゃんと見るんだよ」みたいな。「身体をこう動かして」っていうのではなく、「ここに何々があるからこうして」と、見えないものを一緒に見ようとしてくれて、それを動きに起こしていく作業をしてくれる稽古場だなと思います。そこから得られるものがたくさんあるのが楽しいです。
いぬづか いま言ってくれたことは、実はパントマイム役者的には普通ではあるんです。でも台詞がある有声劇だとそこまでいかなくていいと思うから、文化の違いみたいな感じですよね。もちろん有声劇でも、役者の鍛え方としてパントマイムはあると思います。でも習う技術もある程度固定されているので、私はそこじゃないマイムを体験してほしいというか、私がやってたから一緒にやろうよ、みたいな気持ちでやってるところはあります。

◆照明、音楽、場面、お客さん。それぞれの楽しみなこと
――みなさんがご自身としてこの公演で楽しみにしていることを教えてください。
別府 僕は荒巻久登さんの照明が楽しみ。
――今回、照明という要素が増えるということですね。
いぬづか はい。でも一般的な照明よりかなり少ない灯数になるので、その制限の中でどうやってくださるのかなって。荒巻さんも「制限があるほうが燃える」と言ってくださっていたので楽しみです。
別府 アコギ一本の照明版みたいなね。
いぬづか 私たちのコンセプトに「最低限」とか「原始的な」とかがあるから、バンバン色を使って、みたいな照明だと多分合わなくなっちゃうんですよね。
草野 私は井上さんの音楽です。前回も私たちの演技を見ながら音楽をつくってくれて、合わせてくれたんですよ。音楽とのコラボレーションみたいなものが、稽古の中で積み重ねながらできていくのが楽しかったです。音楽が乗るとセリフの出方とかも変わるので、今回も楽しみだなって思います。
峰尾 台詞で数字と法廷用語とメニューの羅列があるので、そこがちゃんと言えたらもう自分で自分を褒めてあげたいと思ってます(笑)。言えるだけじゃダメなんですけどね。その場面をきちんと成立させられるように、なっている自分が楽しみです(笑)。
いぬづか 今回は作品が最終的にどんな形になるかまだわからないのが楽しみ。本番前の、稽古している段階では私たちが作品と会話をするんですけど、本番になったら作品と会話するのはお客さんじゃないですか。お客さんにどう届くのかは、全然読めないので楽しみです。

(取材・文・写真:中川實穗)
FUKUOKA Physical Theater第2回公演
『マイムモモ』

原作:ミヒャエル・エンデ『モモ』
脚色:別府源一郎
演出:いぬづかひかる
音楽:井上公太
チラシデザイン・衣装:草野明華
制作:本田範隆
出演:井上公太、いぬづかひかる、草野明華、峰尾かおり
公演日:2026年2月26日(木) ・27日(金)
会場:塩原音楽・演劇練習場 大練習室
チケット:2000円(後払い制)
公式サイト:https://fukkcal.tumblr.com/