2025.10.09
師走の風物詩!『立川志の輔・立川生志 兄弟会』立川生志師匠 会見レポート
今年も博多座にて、『立川志の輔・立川生志 兄弟会』が12月19日に上演されます。それに先駆け博多座で生志師匠による会見が行われました。その様子をレポートします。

▲立川生志師匠
いまでは師走の風物詩となった博多座の『立川志の輔・立川生志 兄弟会』は、2010年に開催された立川談志と立川生志による「親子会」(2010年)が始まりです。それが、兄弟子・志の輔との「兄弟会」へと発展し、今年で15回目を迎えます。
この会は、お二人の気心知れた仲ならではの口上から始まりご挨拶で終わります。口上は、生志師匠が「志の輔にツッコめる後輩は僕ぐらい」と語るように、お二人の信頼関係が際立つ時間。そこで一気に観客の心をほぐし、落語は50分の長講一席ずつという真剣勝負です。トリは毎年交代で、今年は志の輔師匠がトリの年。圧倒的な人気を誇り、新作から古典までを自在に操る志の輔師匠と、福岡出身で古典落語を徹底的に掘り下げ、工夫を加えて練り上げていく生志師匠が、今年はどんな一席を披露するのか、期待が高まります!
◆あのときの“一歩”が、談志との「親子会」に
――第15回目の節目ということで改めて初回のことをうかがいたいのですが、談志師匠との「親子会」は博多座で初めて開催された落語会でした。当時、どのようなお気持ちでしたか?
これは毎年言うんですけど、かつて(生志師匠から博多座に相談して)断られたことがあるんですよ。「うちはやれません。歌舞伎をやる劇場ですよ」と。その博多座さんから「やりませんか?」とお声をかけていただいて、談志にお願いをして「親子会」をやりました。それが大成功で、以来、博多座さんは落語会をやるようになりました(笑)。
僕は福岡出身ですので、「博多座で落語をやるのは僕が最初なんだ」という思いはとても強く、それを覚えています。「親子会」の時は前座も僕が務めたんです(通常であれば弟子が務める)。じゃないと前座が最初に博多座の舞台を踏む落語家になりますから。それが最初の思い出です。
――もともと博多座でやりたかったのはどうしてですか?
やはり地元が福岡なので、まだペーペーだった頃に「博多座でやれたらいいよね」と言われたことがありました。言った人が本気で言ってないとわかったから、「絶対やってやる」とその時に思って。でもやはりいきなりはできませんから、真打披露の時に「博多座を使いたい」とお願いしました。その時は先ほど言った通り縁がなかったんですけど、そのお声がけをしていたおかげで後に「やりませんか」というお話がきた。だからあの一歩は大事だったんですよね。これはなんでもそうですけど、“一歩”は大事です。その積み重ねですよね。この会見だって、いきなり僕が「やります」と言っても(メディアが)集まらないと思うんですよ。(いつも会見を開いている)博多座さんが「やるよ」と言うから集まってくださる。やっぱり大事なんです、積み重ねが。だからありがたいなといつも思って、会見に出させてもらっています。
――初めての博多座だからこその演出などはありましたか?
やはり師匠である談志がわざわざ来てくれるので、喜んでもらおうという気持ちで、“師匠が花道から出てくる”という演出をしました。映像が残っているんですけど、その談志の嬉しそうな顔。3階席にまで向かって手を振ってるんですよ。翌年に談志は亡くなるので、最後の親孝行ができたかなと思っています。
◆「高座にあがった時の、とにかくお客さんを喜ばせようという姿勢」
――今回は15回目で節目の回でもあるかと思いますが、どうお感じですか?
正直、15回も続くと思っていませんでした。「親子会」の時からもちろん毎年やりたいと思っていたんですけども、先ほど申し上げたように談志は翌年11月に亡くなったので叶わなかった。それを志の輔に「親子会でやったのを兄弟会でやってもらえますか」とお願いして、快く引き受けてもらって。ただこれも毎度申し上げますが、志の輔は独演会が多くて、人と一緒にやるっていうのをあまりやらない方なんですよ。なのでここまで毎年やってくれるというのは、ある意味ちょっと自分でも驚いてますね。
ちょうど今しがた楽屋で志の輔と別の要件で電話していたので、「実はこれから記者会見なので、なにかコメントをいただけますか」と聞いたんですよ。そしたら志の輔もやっぱり「もう15回か」と驚いていました。そして「博多座という劇場が素晴らしい」と。志の輔は全国のいろんな劇場で独演会をやるんですけど、「歌舞伎のために作られたこの劇場の“気”が本当に素晴らしくて、それをお客さんに伝えるために一生懸命に喋っています」ということでした。「15回やらせてもらって、ありがたいことだと思います」と申しておりましたので、お伝えしておきます。
――師匠は「二人会」は他の方ともやられていると思うのですが、志の輔師匠とやる会は、意味合いは違いますか?
やはり全然違いますね。「二人会」を一緒にやるのは同期やちょっと先輩の落語家です。でも僕にとって志の輔は、自分が入門してすぐ真打になった人で、(志の輔には)弟子がいなかったので、僕は弟子代わりみたいにして鞄持ちをして現場について行っていた人なんですね。その人と看板を並べて「兄弟会」という。僕の独演会に、“ゲスト”で来てもらうことは過去にもありました。でも“看板を並べる”ということはないんです。志の輔はほとんど独演会しかやらない人なので、その人がこうやって「兄弟会」をやってくれて、今から記者会見だと言えばちゃんとコメントもくれて、本当にありがたいなという思いです。ただ、そういう立場の先輩ですけどやっぱり高座にあがった時は芸人なので、負けたくないという思いがある。そういう意味でも他の人との「二人会」とはちょっと意味合いが違います。
――同業者として感じる、志の輔師匠のすごさとはどんなものですか?
パワフル、エネルギッシュ。ちょうど10歳年上ですが、楽屋では疲れていらっしゃるんですよ。でも高座にあがった時の、とにかくお客さんを喜ばせようという姿勢。そして「志の輔らくご」として、新作も古典も自分の色で、他の人にはできない落語をつくり続けている。小さな会場でやられている頃から近くで見ていますが、どんどん規模を大きくして、どんどんお客さんを呼んで、さらにメディアにも出て、ということを並行してやる姿は、同業者としてやっぱりすごい人だなと思いますね。落語家でああいう生き方をしてきた人はなかなかいないです。テレビ草創期には落語家が番組に出ることもあったけれども、志の輔の時代はもうタレントが他にいっぱいましたから、その中であのポジションを作ったというのがまずすごいこと。でもそこでテレビタレントで終わることなく、本業を地道に続けてきた結果が今日なんだろうなと、そばで見ていてすごく尊敬いたします。
◆今年は、まくら代わりに○○を
――出番は毎年入れ替わります。前半と後半で選ぶ演目は変わりますか?
はい。特に博多座のような大きな劇場の場合、トリで“笑わせて帰す”というのもアリなんですけど、ほろっとする人情噺をやったほうがお客さんが満足してお帰りになることが多いんですよね。僕の独演会でもそうしていますし、そこは志の輔に教わったことでもあります。なので、トリをとる時はできるだけそういう演目を選ぶようにしています。
――今年は師匠は前半ですが、どうなりそうですか?
つまり今回は志の輔がトリで感動させてくれるので(笑)、僕は自分の持ち味を生かして、楽しんでもらえばいいのかなと思っています。なにをやるかはまだわからないですが、50分ぐらい持ち時間があるんですよ。今年は「立川生志のニュース落語3」(梓書院)という、僕がラジオで毎週、時事ネタを元につくっている創作落語を集めた本が2年ぶりに出たので、まくら代わりに時事ネタを一席やって、古典落語をやろうかなと思っています。これは前半だからこそですね。
――師走の風物詩となった「兄弟会」、今年も楽しみにしています。
そう言っていただけると。僕自身も(この会で)今年も終わりだなと思います。もちろんその後も仕事はあるんですけど、博多座さんの高座に上がるというのはやはり緊張感がありますから。
『立川志の輔・立川生志 兄弟会』
【出演】立川志の輔・立川生志
【会場】博多座(https://www.hakataza.co.jp/access/)
【日程】2025年12月19日(金) 開演16:00
【チケット】10 月25日(土)午前10時より電話予約・インターネット発売開始
10 月 26 日(日) 午前10 時より残席がある場合のみ博多座チケット売場でも販売
【博多座公式サイト】
https://www.hakataza.co.jp/lineup/112