2025.09.08
観劇せん?・・・柄本明さんと渡辺えりさんが話す『また本日も休診~山医者のうた~』
舞台『また本日も休診~山医者のうた~』が、10月11日(土)から15日(水)まで博多座で上演されます。
『また本日も休診~山医者のうた~』は、その生涯を地域医療に捧げ、地元の人々に愛され続けた医師で作家の見川鯛山によるエッセイ「田舎医者」シリーズを原作にした舞台作品です。2021年に東京・明治座で上演された『本日も休診』は、那須高原に佇む小さな診療所で繰り広げられる笑いあふれる人情喜劇が好評を博しました。
前作に続き医師の見川鯛山を演じるのは柄本明。今作から鯛山の妻・テル子を演じるのは渡辺えり。さらに引き続き出演する佐藤B作、笹野高史らに加え、江口のりこ、林翔太、市川美織ら新キャストも加わり、脚本・演出を田村孝裕、音楽をパスカルズが手掛けます。
先日、博多座にて柄本明さんと渡辺えりさんの取材会が行われました。そのにぎやかな模様をお届けします!
――今回はどんなお話になりますか?
柄本 栃木県・那須高原に診療所がありまして、そこにいるお医者さんが見川鯛山(本名・見川泰山)さんという実在の方でございます。原作は、その方が村を舞台に書いていたおもしろいエッセイです。現代は大変に忙しいと思うけれども、昭和50年代の那須高原の中で、懐かしいゆったりした時間をお届けできたらと思っております。
渡辺 年配の人たちにとっては懐かしいし、若い人にとっては新鮮ですよね。過疎で無医村の村にやってきた先生の話ですが、(過疎で)もともと住んでいる人の人数が少ない。そのぶん一人ずつの命の価値が大きいというか、一人ずつが濃いというかね。村人一人に何かあったらみんなで集まって心配するような、古き良き昭和の時代が舞台になっています。そういう濃い人たちを、一筋縄ではいかないような個性的な役者が演じるので、脚本もおもしろいんですけど、その3倍ぐらいおもしろい感じになりそうです、よね?
柄本 ありがとうございます(笑)。
――柄本さんは、仲の良い俳優仲間も出演されますね。
柄本 そうなんですよ。佐藤B作、笹野高史。好きじゃないんです。
一同 (笑)
柄本 僕が22、3歳の時に「自由劇場」という劇団がありまして、そこで知り合った仲間です。言ってみれば戦友といったところですかね。だから4年前にこの作品で一緒に出させていただいた時は、挨拶で思わず涙ぐんじゃったんですよ。3人で明治座の花舞台に出られるなんてって。それが今回また実現して、それも今度は初めての博多座を初日として、大変うれしい気持ちです。さらに奥さん役は渡辺えりさんですから。
渡辺 新たにね。私が演じるテル子さんは、明るくて陽気でおしゃべりで、それでみんなをこう呼び寄せるような太陽のような人だったそうなので、それを意識して、もうずっと笑っています。
――今回は、柄本さんの劇団「東京乾電池」に所属する江口のりこさんも新たに出演されます。どんな印象がありますか?
柄本 江口さんは劇団に入った時からがんばり屋さんでした。新聞配達をして劇団(の活動)をして、とにかくがんばるタイプです。江口さんは台詞を棒立ちで言うのがいいね。電信柱が喋ってるみたいにしてるの。これがとっても素敵ですね。
渡辺 私は彼女が新人の養成所の発表会から観ているんですけど、メキメキ腕を上げて、今ではああいう稀有な存在感のおもしろい役者さんになって。まだ稽古が始まっていないのですが、役もおもしろいけど江口さんそのものがおもしろいので、彼女の演技も見ものだと思います。それとこの作品には熊も出てくるんですよ。でもこっちには熊がいないんですってね。私が熊を解体して熊鍋を作るシーンがあるんですけど、福岡の人はハテナって感じになりますかね?(笑)
柄本 (大笑い)
渡辺 どうなのかな?
柄本 (大笑いしながら)わからない(笑)。
渡辺 福岡では熊が絶滅したそうです。
柄本 はっはっはっは! 言っておきますけど、そんなに熊の話、出てきませんからね?
渡辺 出てきますよ!
柄本 出てくるけど、出てくるけど、そんなにおおごとな話じゃないから(笑)。
渡辺 あそこは私の見せ場ですから。私の唯一の見せ場じゃないですか、あの熊鍋を配るところ(笑)。
柄本 そうだけど(笑)。
渡辺 そうですよ! 今回はパスカルズの生演奏があって歌もあるんですけど、今のところ私が歌うシーンはないですし。
――歌のシーンがあるのですか?
渡辺 あります。映画、ドラマの音楽でも脚光を浴びる「パスカルズ」からバンドメンバーの5人が出演します。那須高原の美しい自然風景をアコースティックな音楽で表現するんです。
――柄本さんは再び見川鯛山さんを演じることで楽しみにされていることはありますか?
柄本 見川鯛山さんは実在される方で、代々続くお医者さんの家系で18代目なんですけども、本当に素敵な方なんですよ。だから前回もそうだったけど、とても見川鯛山さんのような人間の大きい方の役なんかできないなっていうのが正直なところ。でもやらせていただくわけですから、とにかく見川鯛山を探しながら。これは他の仕事でもなんでもそうですね。その人物をいただいて、その人物を探す旅に出た、という風にいつも考えております。……いいこと言ったな(笑)。
渡辺 探す旅っていいですね。役を探す旅。
――前作を拝見して、柄本さんと佐藤B作さんと笹野高史さんのシーンが楽しそうで今も心に残っています。前回やられてどうだったのか、今回はどんな楽しみがあるか、お聞かせください。
柄本 ありがとうございます。なんだか毎回バトルになりますね、3人ともね。でもこうやって顔を見合わせて、なにか(台詞を)言わなくちゃいけないわけだから。その時に生まれる空気感というかね、それが楽しいものになればと思っています。そしてやっぱり我々は稽古場。稽古場をとにかく楽しくっていうことが常に最初のテーマです。我々3人を若い人たちも見てますから。その、手本となるような(笑いだす)。
渡辺 (一緒に大笑い)
柄本 手本になれたらいいんだけどなあ!っていうね、思いで、がんばりまぁす(笑)。
渡辺 お手本にしてやらせていただきます。東京での記者会見でも、3人が言いたい放題言い合いながらやってるのを羨ましいなと思っていました。でも、20代から一緒だった人といま元気でやれるってなかなかないじゃないですか。そういう3人が「お前なんか嫌いだ!」とか言いながらやれるっていうのは、なかなかないです。すごく羨ましいなと思います。
柄本 B作がささやん(笹野)に「嫌いだ」って言ってるの、あれほんとだからね?(笑)
一同 (笑)
渡辺 動じないんですもんね、笹野さん、
柄本 動じない。「えへへ」って笑ってる(笑)。
渡辺 その現場を見ることができるっていうのは、すごく幸せだなと思います。
――『また本日も休診~山医者のうた~』はまず博多座で幕が開きます。
柄本 僕個人のことで言うと、博多座は観に来たことはあるんですけれども、出るのは初めてです。僕は福岡、大好きなんです。なんか明るくてね、温かくて、とっても大きい感じがして。いいですよね、福岡。
渡辺 私はコンサートで福岡によく来ています。福岡は、柄本さんもおっしゃってましたけど、明るくて豊かで、それでこう歓迎してくださる。
柄本 そうだねえ。
渡辺 どこに行ってもニコニコ「いらっしゃい」って言ってくださる、その福岡の方たちの人柄が大好きです。博多座は、6年前に『三婆』で出演しましたし、藤山直美さんや尾上松也さんの舞台があると飛行機で日帰りで観に来たり、十八代目中村勘三郎さんが博多座で公演をやっている時に、観に来て一緒にありとあらゆるご飯を食べたり屋台に行ったり。そういう思い出の深い場所で、また尊敬する柄本先輩と一緒に出させていただくことを光栄に思ってます。
(文・撮影 中川實穗)
『また本日も休診~山医者のうた~』
【原作】見川鯛山
【脚本・演出】 田村孝裕
【音楽】 パスカルズ
【出演】柄本明 渡辺えり 江口のりこ 佐藤B作 笹野高史
林翔太 市川美織 松金よね子 花王おさむ 矢部太郎 星野園美 佐々木春香 大西多摩恵
西本竜樹 中田浄 春可直子 上原奈美 西村喜代子 小島久人
【企画・制作】明治座 【企画協力】ノックアウト
【博多座公演サイト】https://www.hakataza.co.jp/lineup/81
【公演日程】
◆福岡公演
[会場]博多座(福岡県福岡市博多区下川端町2-1)
[日程]2025年10月11日(土)~10月15日(水)
[主催] 博多座
◆東京公演
[会場]明治座(東京都中央区日本橋浜町2-31-1)
[日程]2025年10月23日(木)~11月2日(日)
[主催]明治座
◆宇都宮公演
[会場]栃木県総合文化センターメインホール(栃木県宇都宮市本町1-8)
[日程]2025年11月6日(木)
[主催]下野新聞社、公益財団法人とちぎ未来づくり財団
◆山形公演
[会場]やまぎん県民ホール大ホール(山形県山形市双葉町1丁目2-38)
[日程]2025年11月22日(土)
[主催]さくらんぼテレビ [共催]山形県総合文化芸術館 指定管理者 みんぐるやまがた