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2025.06.24

観劇せん?・・・小池徹平さんに聞く、ミュージカル『ある男』

 

ミュージカル『ある男』が8月4日に東京・東京建物 Brillia HALLで開幕し、福岡では9月6日(土)・7日(日)に福岡市民ホール 大ホールにて上演されます。

原作は、第70回読売文学賞を受賞し映画化もされた人気長編小説「ある男」(平野啓一郎 著)。今回が初めてのミュージカル化です。

音楽をジェイソン・ハウランド、脚本・演出を瀬戸山美咲、歌詞を高橋知伽江が手がけ、浦井健治と小池徹平がW主演を務め、濱田めぐみ、ソニン、上原理生、上川一哉、知念里奈、鹿賀丈史らが出演します。

本作でW主演としてX役を演じる小池徹平さんが6月上旬に来福され、取材会が行われました。そのレポートをお届けします。

 

 

おもしろいものをつくる、信頼しているチーム

 

――新作ミュージカルの立ち上げとなりますが、現在はどのような段階ですか?

「今まさに製作段階です。ちょうど昨日(※取材時)、歌稽古が始まりました。脚本は8~9割といったところでブラッシュアップ段階です。ジェイソン・ハウランドさんの音楽も含めやり取りを重ねています。間違いなく良い方向に進んでいる、という印象です」

 

――原作を読まれての感想をお聞かせください。

「“自分とは何者なのか”という、肩書や名前にとらわれない本質的なアイデンティティについて問いかけてくる作品で、これは若い時にはあまりわからなかったことですが、この年齢になり、家庭を持つようになり、“仕事で積み重ねてきた自分”や“家庭で父として過ごすプライベートな自分”などいろいろな“自分ってこんな人間だったんだ”に気付かされることがあります。そういうこともあり、今の自分に響く作品だと感じています」

 

――本作に参加することになっていかがですか?

「以前出演させていただいた『デスノート THE MUSICAL』(2015年初演・2017年再演に出演)のチームが今作も製作するのですが、ものすごくおもしろいものをつくるので信頼しているチームなんです。当時、『DEATH NOTE(デスノート)』がミュージカルになると聞いて驚いた方も多かったんじゃないかと思うのですが、今回もそういう作品で。それをこのチームでつくるという期待感が僕自身にもあります。昨日ようやく歌稽古が始まって、いまは高揚しています」

 

――小池さんが演じるXの印象はまだこれからという感じですか?

「そうですね。実は去年の12月にこの作品のワークショップがあって、参加できるキャストが集まって、生まれたてほやほやの脚本で本読み(読み合わせ)をしたのですが、その時の脚本と今の脚本でも違っているので。もちろん物語の大筋は変わらないですけどね。この感じはオリジナル作品ならではだなという感じです」

 

 

何気ない会話ができるってことが大事

 

――亡くなってから名前も過去も偽りだったことがわかるXを調査する弁護士・城戸章良役の浦井健治さんは、『デスノート THE MUSICAL』以来8年ぶりの共演となりますが、どのような印象をお持ちですか?

「健ちゃん(浦井)は、演劇の世界で第一線で活躍されていて、幅も広くて、役者として信頼、尊敬している人物です。ミュージカル界の先輩でもあるので、安心感がすごくあります。8年ぶりの共演ではありますが、僕たちは共通の知り合いがいて、定期的に健ちゃんの話を聞いていたんです。健ちゃんもそれは同じみたいで、そこで情報をアップデートしていたので、8年ぶりに会っても、そう思えないような距離感で、『たのしみだよね』って作品に入れました。だからやっぱり安心しかないですね。それに健ちゃんに限らずこのメンバーであれば、安心感があって、濃密な舞台になりそうな予感がしています」

 

――先ほど、おもしろくて信頼しているとおっしゃった『デスノート THE MUSICAL』チームの浦井さん、濱田めぐみさん、鹿賀丈史さんもいらっしゃいますね。

「はい。ひとつ乗り越えてきた仲間って絆みたいなものがすごくあるんです。だから何気ない話ができる。稽古場でめぐさん(濱田)が水を飲んで、『なんか変わった匂いがする』『たしかに。でも味は普通ですよ!』みたいな(笑)、初対面だったら絶対しない会話がですよね。こういうどういうでもいい会話ができることが僕はすごく好きだし、大事だと思っています。踏み込めるってことだから。今回はそういう会話ができる方が多いです。知念(里奈)さんと上川(一哉)くんは初めて共演させてもらうのですが、僕以外のみなさんは共演経験があって、『めちゃくちゃやさしい人たちだよ』って教えてくれました。年齢も近いですし、いまがんばって距離を詰めています」

 

――妻の谷口里枝を演じるソニンさんは、舞台でも映像でも何度も共演されています。

「腐れ縁みたいな存在です(笑)。これまで兄妹とか、カップルとか、殺し合うとか(笑)、いろいろな役を演じてきたのですが、夫婦役は意外と初めて。それに今回、彼女が演じる里枝は、今までの役のイメージとちょっと違うんです。きっと彼女にソウルフルで内にパワーがある強い女性のイメージを持っていらっしゃる方は多いと思うんですけど、今回の里枝は、強い女性ではありつつもまたちょっと違う。この意外な役はすごく楽しみです。現段階の脚本を読んでいてすごくグッとくるものがあるので、これを実際に彼女が演じたらどうなるんだろうなという期待をしています」

 

――ジェイソン・ハウランドさんの楽曲はいかがですか?

「制作発表でも歌わせていただいた『暗闇の中へ』(https://youtu.be/ZBu7A_wUnBE)のようなかっこよくてキャッチーなゴリゴリのパワフルナンバーもあれば、複雑な旋律の楽曲もあって幅が広いですし、歌から入ってくる情報は大きいと思います。みなさんに問いかけるようなパワフルで愛の溢れる楽曲もあるので、みなさんの心が震えるんじゃないかなと今から期待しています」

 

――見どころがたくさんありそうです。

「はい。この作品は登場人物それぞれに色があって、アイデンティティをえぐるような表現や心情の表現があります。だから誰に感情移入するかによっても見え方が少し変わってくるんじゃないかと思います。皆様の心になにか残る仕上がりになる予定です」

 

 

福岡に来たら、人に会いに行く

 

――福岡公演の楽しみなことはありますか?

「今回は2日しかないから非常に短いですよね……(笑)。でも以前、公演で1か月ほど滞在した時はいろんな場所を回りました。休演日には大濠公園に行って散歩したり、百道浜に行ってみたりしていました」

 

――福岡の好きな食べ物はありますか?

「若い頃に博多の名物は一通りいただいたので、今はどちらかというと、その頃に知り合ったお友達と言いますか、“博多のお父さんお母さん”みたいな存在に会いに行くことが多いです。だから今は“人に会う”という目的もありますね。そこで近況報告したりおいしいごはんをいただいたり、そういう楽しみ方になっています」

 

 

スタイリスト/松下洋介、ヘアメイク/小松由衣

(取材・文/中川實穗、撮影/古賀純佳)

 

《ミュージカル『ある男』福岡公演概要》

◉日程:2025年9月6日(土)・7日(日)

◉場所:福岡市民ホール 大ホール

◉料金:S席14,800円/A席9,900円/B席6,600円

◉主催:インプレサリオ/KBC ◉企画制作:ホリプロ

◉福岡公演HP:https://www.impresario-ent.co.jp/stage/aman2025/

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